今回のトピックは、ユーザープロファイルとデータ管理について書きたいと思います。まず、用語に対する認識を合わせるため、これから説明する内容を、まずはきちんと定義したいと思います。ユーザーのデスクトッププロファイルは、ユーザーやアプリケーションによって PC に追加された、デスクトップ/アプリケーション固有のカスタマイズ情報で構成されています。プロファイルには、自分で選んだデスクトップの壁紙や Windows 7 のタスク バーに表示されるアプリケーション、さらにはデスクトップのごみ箱の位置なども含まれるでしょう。アプリケーションを PC にインストールする際にも、デスクトップやオペレーティングシステム環境に何らかの変更が生じ得ます。ユーザーの Office ツール バー設定やユーザー定義辞書、Outlook の署名は、PC 固有のアプリケーション設定の例といえます。ユーザーのデータは、ドキュメントや写真、音楽、ビデオのようなものから Internet Explorer のお気に入りや実行中のアプリケーション関連のデータに至るまで、多岐にわたります。
エンド ユーザーのデスクトップの管理に関して、IT プロの多くが課題を抱えています。ここでいう課題とは、たとえば、複数のオフィスや PC から作業しなければならないユーザーが、あらゆる重要なデータに確実にアクセスでき、そして安定感があり、使い勝手のよいデスクトップ環境を維持できるようにする、といったようなことです。ビジネスの継続性を維持する、というのも課題と言えるでしょう。モバイル ユーザーのサポートに携わる IT プロは、エンド ユーザーのラップトップが紛失し、盗難に遭い、さらにハードディスクが故障するといったケースを常に予測し、対応できるようにしておく必要があります。エンドユーザーが元の状態をすぐに回復でき、いつもの使い慣れたデスクトップ/アプリケーションを設定でき、重要なファイルやフォルダーを一つ残らず使えるようにしてあげられるかどうかが鍵となるでしょう。エンドユーザーは、その結果、満足度や IT プロへの評価や生産性を上げるかもしれないし、会社や個人のデータを大量に失って、逆に満足度や生産性を下げるかもしれないのです。
IT シナリオを可能にするテクノロジ セットを示すためにマイクロソフトで使われる言葉が、「ユーザー状態の仮想化」というわけです。この言葉が基本的に意味するものは、ユーザー設定とデータの一元化によって使用中の物理 PC を抽象化し、エンド ユーザーが使うと想定される認証済みの PC で、関連するデータおよび設定を余すところなく利用できるようにする、ということです。ユーザー状態の仮想化のコンポーネント技術 (移動ユーザー プロファイル、フォルダー リダイレクト、オフライン ファイル) は新しいものではありません。Windows 2000 で導入済みですが、Windows Vista や Windows 7 で、すべてにわたって大きく改良されたのです。その目的は、ユーザー エクスペリエンスやパフォーマンス、IT の管理性を向上させるということに尽きました。
それでは、これらの技術の一つ一つ、そしてユーザー状態の仮想化でそれぞれが担う役割について簡単におさらいしましょう。移動ユーザープロファイルとは、ユーザーのデータおよび設定をサーバー上に一元的に保存することによって、ユーザーが別のコンピューターからログオン/オフしたときにもそれを保持するというものです。つまり、どのコンピューターを使っても、元のデスクトップやアプリケーション、データを使ったのと同じようなエクスペリエンスを実現できる、ということになります。フォルダーリダイレクトとは、ユーザー プロファイル内の定義済みフォルダーの場所を、ネットワーク上のサーバーに変更できる機能です。ここれを利用すると、別のコンピューターからでもファイルを同じように保存したり、それらにアクセスしたりできるようになります。ですから、ドキュメントを「ドキュメント」(またはその他のリダイレクトフォルダー) に保存すると、実際の保存先はデータセンターのサーバーになります。その結果、別の PC Ilog でアクセスできるようになります。オフライン ファイル (クライアント サイド キャッシュ (CSC)) は、サーバーへのネットワーク接続が利用不能または低速な場合でも、PC のエンド ユーザーがネットワーク ファイルを利用できるようにするという機能です。通常、オフラインファイルは、フォルダー リダイレクトと組み合わせて使用します。企業ネットワークに接続できなかったり、サーバーへの接続が不能または低速だったりする場合にも、エンドユーザーは、オフライン ファイルを利用することによって、リダイレクトされたフォルダー内のファイルを使用できるようになります。これらの技術は、10 年ほど前に始めて発表されましたが、それ以来、ユーザーとの対話を通じて各技術の短所や限界、最善策を模索してきたというのが正直なところです。
では、これらの技術の開発経緯をざっと振り返ってみたいと思います。
移動ユーザー プロファイル、フォルダーリダイレクト、オフライン ファイルが開発されたのは 90 年代後半のことです。当時のコンピューターの世界は今とは似ても似つかないものでした。当時の主要な PC デバイスはデスクトップ PC でした。ラップトップやモバイル ワーカーといったコンセプトは、今のようには浸透しておらず、PC ユーザーの PC とは主にオフィスの PC のことでした。PC は企業のものだと考えられており、ほとんどビジネスの世界だけで利用されていました。PC ユーザーがオフィスのさまざまな場所、あるいは別の支社で仕事をしなければならないときには、その場に置かれた PC を使用するほかありませんでした。複数の PC からドキュメントにアクセスしなければならなかったときには、企業のファイル サーバーからアクセスして変更を加えます。その後、ファイルサーバーに保存することによって別の PC からも利用できるようにしていました。終業時には、PC をログオフしてから帰宅していたものです。家庭でのインターネット接続が普及し始めたころ、VPN を使って家でも仕事ができるようになってきていました。VPN は家庭の PC でよく使われていました。VPN に接続した後、必要なドキュメントが保存された企業のファイルサーバーにアクセスしていました。
さて、話を現在に戻します。今や、状況は一変しています。デスクトップは今も使われていますが、ラップトップの組織での使用率が、Windows 2000 や Windows XP が発売された頃の予測をはるかに凌ぐ勢いで増えています。この変化の裏には、現在の職場環境が 10 年前とは大きく異なるという事実があります。以前は存在すらしていなかった企業 Wi-Fi ネットワークを利用して、複数の異なる作業環境でラップトップを使って働く PC ワーカーも増えました。帰宅時も、ラップトップをログオフすることは、まれです。ラップトップをログオフすると、未保存のドキュメントや利用中のインターネットブラウザーなど、作業中の処理がすべて閉じられ、無駄になってしまうからです。彼らは、ログオフする代わりに、ラップトップを休止状態またはスリープ モードに切り替える方法を選んでいます。家で仕事を再開するときは、ラップトップを開いて (ログオンではなく) ロックを解除すれば、元の状態を回復できます。企業ネットワークを利用して作業する場合は、ロックを解除した後に VPN 接続を行い、企業ネットワークに接続します。さらに、現在の PC はますますパーソナルなものになっています。PC ワーカーはビジネスに限らず、プライベートの Web 閲覧や、画像、音楽などのファイルの保存にもラップトップを使用しており、ラップトップは事実上、ビジネス/プライベート両用のデバイスであり、レポジトリになっています。
こうした変化が重要なのはなぜか。それは、以前の移動ユーザープロファイルやオフライン ファイル、フォルダー リダイレクトでは、この種の新しいワーク スタイルがほとんど考慮されていなかったためです。以前の Windows 2000 の移動ユーザー プロファイルの設計 (Windows XP にも継承されています) では、ユーザーが移動ユーザー プロファイルを使用するように設定すると、PC のログオン/オフ時にプロファイルの同期が発生していました。モバイル ワーカーの多くが利用する前述の方法を使えば同期の頻度が少なくなるのは、もうおわかりですね。初期のフォルダーリダイレクトでは、ごく一部のフォルダー (その日、多くの PC ユーザーが関わったフォルダー) だけがリダイレクトされます。PC ユーザーにとっての重要な情報は多様化しています。オフラインファイルは、ユーザーが LAN ベースのネットワークに接続することが多かった事実を前提としており、ファイルのデフォルトの保存先は、PC ではなくネットワークでした。PC をネットワーク ベースのファイルの主な保存先として利用するエンド ユーザーを優先したものではなかったのです。
今の PC ワーカーやそのワーク スタイル、彼らのPC へのありとあらゆる期待が、それ以来、大きく変化しました。当時のテクノロジですべてのニーズを満たせるなどとは当時の人たちも思ってはいなかったと思いますが、Windows のユーザー状態の仮想化技術は、現在のビジネスのニーズやワークスタイルに対応できるように、Windows Vista から Windows 7 へと継続的に改善されました。このような改善の目的が、ユーザー エクスペリエンスや管理性、パフォーマンスの向上に焦点が当てられていたことは、既に述べたとおりです。
今回の投稿の目的は、テクノロジに対する認識を共有し、各技術の開発経緯や当初の意図、考慮事項、現在対応すべき各種のニーズなどを説明することにありました。今後、Windows のユーザー状態の仮想化技術の改善点の詳細や、ユーザーや IT プロにとっての利点について、解説したいと思います。
(本ブログは、2010 年 4 月 19 日 Windows Team Blog に投稿された、Windows Client Product team / Sr Product Manager Wole Mose の投稿を翻訳したものです)